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カツラの葉っぱ 大好き!

カツラの葉っぱ 大好き!

絲山秋子ミニブームR11

絲山秋子といえば雑誌やネットでもよく取り上げられる作家であるが・・・絲山秋子ミニブームを以下のとおり改訂、見直ししました。

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<絲山秋子ミニブームR11>
図書館で絲山秋子さんの小説を『逃亡くそたわけ』、『ラジ&ピース』とたてつづけに借りて読んだが・・・良かったので、更に2冊借りたのです。
これらの作品を通じて思うのだが、とにかく車の運転や転勤や方言のお話が多いわけで・・・・
突き詰めると、ロードムービー風の東京コンプレックスあるいは漂泊願望の作家ではないかと思うのです。

借りた本を(雑誌やネット記事も含めて)、並べてみます。

<小説>
・まっとうな人生(2022年)
・御社のチャラ男(2020年)
・薄情     (2015年)
・離陸     (2014年)
・忘れられたワルツ(2013年)
・末裔  (2011年)
・不愉快な本の続編(2011年)
・妻の超然(2010年)
・北緯14度(2008年)
・ラジ&ピース(2008年)
・ばかもの(2008年)
・イッツ・オンリー・トーク(2006年)
・逃亡くそたわけ(2005年)

<エッセイ>
・絲的メイソウ(2009年)
・絲的サバイバル(2009年)
・豚キムチにジンクスはあるのか(2007年)

<雑誌、インターネット、他>
・文学界 10月号(2023年)「絲山秋子デビュー20年」
・『bestseller's interview 第77回 絲山秋子さん』(2024年)

R11:『文学界 10月号』、『bestseller's interview 第77回』を追加



【まっとうな人生】

絲山秋子著、河出書房新社、2022年刊

<「BOOK」データベース>より
名古屋出身の「なごやん」と繰り広げた九州縦断の脱走劇から十数年後ー。富山県のひょんな場所でなごやんと再会した「花ちゃん」。夫のアキオちゃんと娘・佳音の成長を愛おしむ日々に、なごやん一家と遊ぶ楽しみが加わった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でその生活が一変!!続々とやってくる不安の波に押しつぶされそうになりながら、花ちゃんが出会ったもうひとりの自分とは?富山県を舞台に『逃亡くそたわけ』の続編が幕を開ける!

<読む前の大使寸評>
追って記入

rakutenまっとうな人生






【御社のチャラ男】

絲山秋子著、 講談社、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、この世界と私たちの「現実」。すべての働くひとに贈る、新世紀最高“会社員”小説。

<読む前の大使寸評>
絲山さんの「新世紀最高“会社員”小説」ってか・・・これは面白いはずではないか。

<図書館予約:(1/27予約、副本?、予約?)>

rakuten御社のチャラ男

『御社のチャラ男』1:当社のチャラ男:岡野繁夫
『御社のチャラ男』2:我が社のチャラ男:池田かな子




【薄情】
薄情

絲山秋子著、新潮社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんらとの交流を通し、かれは次第に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起きー。季節の移り変わりとともに揺れ動く内面。社会の本質に迫る。滋味豊かな長編小説。

<読む前の大使寸評>
この新作は、2016年の谷崎潤一郎賞受賞とのこと。
絲山秋子ミニブームの勢いで、読んでみるか♪

<図書館予約:(10/31予約済み、副本11、予約3)>

rakuten薄情


「薄情」が谷崎潤一郎賞を受賞したそうだが、「薄情」の絲山秋子さん:著者との60分intereviewを見てみましょう。




【離陸】
離陸

絲山秋子著、文藝春秋、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
「女優を探してほしい」。突如訪ねて来た不気味な黒人イルベールの言葉により、“ぼく”の平凡な人生は大きく動き始める。イスラエル映画に、戦間期のパリに…時空と場所を超えて足跡を残す“女優”とは何者なのか?謎めいた追跡の旅。そして親しき者たちの死。“ぼく”はやがて寄る辺なき生の核心へと迫っていくー人生を襲う不意打ちの死と向き合った傑作長篇。

<読む前の大使寸評>
個人的な絲山秋子ミニブームの勢いで、ちょっと厚めの本を借りたのでおます♪

<大使寸評>
主人公の佐藤は、土木工学科から国交省技官に奉職し、現場勤務を希望するという変わり者である。
ある日、佐藤が勤務する八木沢ダムに、イルベールというアフリカ系の外国人が訪ねてきたのです。

マルティニーク海外県出身のイルベールは、女優乃緒の息子ブツゾウを預り、結局、育てるはめになっているのだが・・・・
子連れのイルベールが、母親の行方を探し求めるというストーリーが、奇しくも最近読んだJ・M・クッツェー著『イエスの幼子時代』に似てなくもないのです。

佐藤が異動でパリのユネスコ本部に出向することになったのだが・・・
ブツゾウの父親は誰なのか? 1930年代に作られた暗号文書が本当ならパラレルワールドがあるのか?
パリに出向している間に、日本では東日本大震災が起きるのです。

絲山秋子はパリ生活を経験し、国交省技官という知人がいたのかもしれないが、よくまあ謎めいた破天荒とも思える小説世界をつくったものだと思うのです。

rakuten離陸





【忘れられたワルツ】
ワルツ

絲山秋子著、新潮社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
地震計を見つめる旧友と過ごす、海辺の静かな一夜(「強震モニタ走馬燈」)、豪雪のハイウェイで出会った、オーロラを運ぶ女(「葬式とオーロラ」)、空に音符を投げる預言者が奏でる、未来のメロディー(「ニイタカヤマノボレ」)、母の間男を追って、ピアノ部屋から飛び出した姉の行方(「忘れられたワルツ」)、女装する老人と、彼を見下ろす神様の人知れぬ懊悩(「神と増田喜十郎」)他二篇。「今」を描き出す想像力の最先端七篇。

<読む前の大使寸評>
先ごろ読んだ『逃亡くそたわけ』が面白かったので、絲山秋子の作品を短期集中的に読んでいます。

amazon忘れられたワルツ



【末裔】
末裔

絲山秋子著、講談社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
家族であることとはいったい何なのか。父や伯父の持っていた教養、亡き妻との日々、全ては豊かな家族の思い出。懐かしさが胸にしみる著者初の長篇家族小説。

<読む前の大使寸評>
著者初の長篇家族小説ってか・・・・爆走気味の著者なので、いかなる自叙伝になっているやら。

<大使寸評>
玄関ドアに鍵穴がないというミステリアスな冒頭があるわけで…
現実とも白昼夢とも区別できないような語り口で、これが自叙伝なのか?とも思うが、これもまた一興である♪

rakuten末裔
『末裔』byドングリ



【不愉快な本の続編】
不愉快

絲山秋子著、新潮社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
女と暮らす東京を逃げ出した乾。新潟で人を好きになり、富山のジャコメッティと邂逅し、そして故郷・呉から見上げる、永遠の太陽ー。不愉快な本を握りしめ彷徨する「異邦人」を描き、文学の極点へ挑む最新小説。

<読む前の大使寸評>
カミユの「異邦人」を意識した小説とのこと・・・・期待できるかも♪
絲山秋子ミニブームがまだ続いています。

rakuten不愉快な本の続編
不愉快な本の続編byドングリ



【妻の超然】
妻

絲山秋子著、新潮社、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
文学がなんであったとしても、化け物だったとしても、おまえは超然とするほかないではないか。「妻の超然」「下戸の超然」「作家の超然」を収録した異色の三部作。

<読む前の大使寸評>
先ごろ読んだ『逃亡くそたわけ』が面白かったので、絲山秋子の作品を短期集中的に読んでいます。
「作家の超然」は手術を題材にしているので、胃なしの大使にとって切実な思いで読んだのです。

rakuten妻の超然



【北緯14度】
北緯14度

絲山秋子著、講談社、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
 30年の時を越え、やっと神様に会える!西アフリカ・セネガルへの魂の旅。友だちと出会うこと、自分の居場所を見つけること、言葉の本当の意味をさがすこと、大切なことを考え続けた長篇紀行。

<読む前の大使寸評>
おお 絲山秋子の長篇紀行ってか・・・
それも西アフリカ・セネガルへの旅というド田舎と言うか、キワモノではないか♪

rakuten北緯14度
『北緯14度』6byドングリ



【ラジ&ピース】
ラジ

絲山秋子著、講談社、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
女の心は、何も入っていない冷蔵庫のようにしんと冷えていた-。それでも電波は、必ずラジオを見つけて鳴らす。女性DJの心を描く、絲山秋子の最新小説。

<読む前の大使寸評>
先日読んだ『逃亡くそたわけ』という小説が面白かったので、二匹目を狙って借りた次第です。
パラパラめくると、この小説には群馬弁がでてくるんだけどこれが田舎ふうで・・・おっと、鄙びた感じでええでぇ♪

rakutenラジ&ピース
『ラジ&ピース』byドングリ



【ばかもの】
ばかもの

絲山秋子著、新潮社、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
気ままな大学生と、強気な年上の女。かつての無邪気な恋人たちは、気づけばそれぞれに、取り返しのつかない喪失の中にいた。すべてを失い、行き場をなくした二人が見つけた、ふるえるような愛。生きること、愛することの、激しい痛み。そして官能的なまでの喜びー。絶望の果てに響く、愛しい愚か者たちの声を鮮烈に描き出す、待望の恋愛長篇。

<読む前の大使寸評>
パラパラとめくってみると、どうやら官能小説のようであるが・・・なんでもやれるのが、ええでぇ♪、絲山秋子ミニブームがまだ続いています。

rakutenばかもの



【イッツ・オンリー・トーク】
糸山

絲山秋子著、文藝春秋、2006年刊

<「BOOK」データベース>より
引っ越しの朝、男に振られた。やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。

<読む前の大使寸評>
絲山秋子デビュー作とのこと・・・これは期待でじそうやでぇ♪

amazonイッツ・オンリー・トーク
『イッツ・オンリー・トーク』1:1 トースト
『イッツ・オンリー・トーク』2:4 ジャージ
『イッツ・オンリー・トーク』3:6 リハビリ



【逃亡くそたわけ】
糸山

絲山秋子著、中央公論新社、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
逃げるのに理由なんていらない。川端康成文学賞作家、糸山秋子初の書き下ろし長編小説。

<読む前の大使寸評>
絲山秋子のエッセイを読んだあとなんで・・・彼女の小説ならイケてるんじゃないかと期待するのです♪

rakuten逃亡くそたわけ
『逃亡くそたわけ』byドングリ



【絲的メイソウ】
s糸山

絲山秋子著、講談社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
「中学生で酒を、高校生でタバコを堂々とやっていた私だが、すき焼きの卵二つはだめだった」。ああ、人生は、なんでジグザグにしか進まないんだ!あっちにぶつかりこっちにぶつかり、ときに迷走、そして瞑想。いつも本気で立ち寄り、本気で考えた毎日を、偽ることなくセキララに描いた、絲山秋子の初エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
どのページを開いても・・・・へそ曲りの大使にも響くわけで、エッセイストとしてピカイチなのかも♪

なお、絲山さんはマニュアルの外車に乗っているそうで、またヘビースモーカーでもあるそうで、すごい♪

借りたのは、2006年刊のハードカバーです。

amazon絲的メイソウ
『絲的メイソウ』3byドングリ



【絲的サバイバル】
サバイバル

絲山秋子著、講談社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
四の五の言わずに外に出ろ!さぁ、七輪持って出かけよう。『絲的メイソウ』に続くエッセイ第2弾は野宿。
【目次】
たったひとりでいたいのだ/窪地窪地、それと薪ったら薪/親愛なるステファニーへ。/キャンプは日常の延長なのだ/氷上デイキャンプ/キュウリと猫と宇宙人/大都会の小さなオヤジ世界/焚き火は蹴って育てろ!/嫁に行くなら六合村へ/野獣と椅子焼肉〔ほか〕

<読む前の大使寸評>
先ごろ読んだ『逃亡くそたわけ』が面白かったので、絲山秋子の作品を短期集中的に読んでいます。
この本は、オートキャンプのエッセイ集となっているのですが・・・
絲山さんは、クーペ・フィアットにキャンプ道具1式、食料を積み込み、一人でキャンプに繰り出すんだそうです。七輪を持って行くところが独特でんな♪

rakuten絲的サバイバル



【豚キムチにジンクスはあるのか】
キムチ

絲山秋子著、マガジンハウス、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
群馬県高崎市在住、一人暮らし作家の泣くに泣けない自炊生活。試作に試作を重ね、今日も思いつき料理にトライ!?Hanakoから生まれた妙に切ない傑作エッセイ集。絲的おいしい生活24連発。

<読む前の大使寸評>
絲的な思いつき料理とは、如何なるものか・・・
06年芥川賞受賞後すぐに出された初期のエッセイ集のようです。

rakuten豚キムチにジンクスはあるのか


それでは、『ラジ&ピース』で群馬弁のあたりを見てみましょう。
p54~57
 毎週火曜日のこの時間は、「なっから群馬弁」。
 初心者の私、相馬野枝に、皆さんの群馬弁を伝授していただくコーナーです。FAXは027-3・・・メールアドレスはwww.joshn-fm・・・ケータイはスラッシュkをつけてください。

 先週いただいた「ガショーキ」つまり乱暴とか粗雑って意味なんですけれど、わかんねーよ、使わねーよ、という声多数いただきました。「ガショーキ」は東毛の方の言葉なんですね。高崎、前橋では使わないようです。

 さて、今週もたくさんいただいています。ラジオネーム恐妻センター前橋さんのなっから群馬弁。
 (嶋野がBGMを切ると同時にあらかじめ録音していた音源を流す。エコーをかけた間島の声が流れる)

 「チョットイッテミラァ」
 「ハアキャア?」
 (BGMをスタートさせる)

 これは、「帰るよ」「もう帰るのかい?」という意味だそうです。「もう」が「ハア」なんですね。なるほどー。帰るときでも、行ってみらぁなんですんね。「ハア、ケエラア」「ハア、ケエルンベ」になると、もっと帰る意思が強いっていう解説をいただいたんですが、これはすごい。恋人同士で使ったりもするんでしょうか?

 それからこちらは、えーと藤岡市のバイアス33さんからいただきました。
 (嶋野、BGMを切り、音源を流す)

 「ミンナンチのカタログ持ってきてクンナイ」
 (BGMスタート)
 この場合「ミンナンチ」っていうのは、「あなたの会社」だそうです。これもびっくりですね。私が藤岡へ行ったら、「ミンナンチの番組いつも聞いてるよ」って言われるのかな、なんだかかわいい言葉ですね。

 えーっと、もう1枚行けますね。こちらは高崎市の不眠鳥さん。
 (BGMを切る。ここは野枝がメッセージを読む)

 「野枝さん、ナカラとオーカとマッサカの使い分けってわかりますか?全部すごくという意味なんですが、ニュアンスが違います。オーカはどっちかというと否定的なニュアンス、マッサカは予想と違う驚きのニュアンスです。これをマスターしたら野枝さんも群馬人ですよ」



【『文学界 10月号』】

雑誌、文藝春秋、2023年刊

<「BOOK」データベース>より
雑誌に付きデータなし

<読む前の大使寸評>
表紙のコピーに特集「絲山秋子デビュー20年」とあるので、借りる決め手になったのです。

rakuten『文学界 10月号』



特集「絲山秋子デビュー20年」から辻原昇×絲山秋子の対談の冒頭部を、見てみましょう。
p82~84
<対談 小説の余白に信を置く>
常に外からやってくる「小説の言葉」を、いかに感受するか。住みよい場所を見つけることの重要性。
井伏鱒二が描く「粗忽者」について・・・。
文學界新人賞選考委員と受賞者、20年を経ての対話。
 
■「いい小説にある唯一感」
辻原:絲山さんが文學界新人賞を受賞されてからもう20年なんですね。当時の自分の選評を読み返してきたんですが、「イッツ・オンリー・トーク」という小説の良さを自分なりにちゃんと捉えているぞ、と(笑)。
「いい小説にある唯一感」と書いたんですが、それはたくらんでできることではない。当時は文學界新人賞から吉田修一、長嶋有、吉村萬壱、円城塔といった優秀な若い人たちが出てきましたが、その中の一人が絲山さんでした。

絲山:本当に嬉しい選評でした。あの小説では最後、蒲田に住んでいる主人公の家に転がり込んできたいとこが、実は44歳で結構な齢だったことがわかります。書いた本人としても、そこは書いていて驚いたところなんです。
 そのことを辻原さんは選評で、「その瞬間に、読者の頭の中で読み直しが実行される」と書いてくださった。私はただ「驚いた」で止まっていたのですが、「読み直しが実行される」と言葉にしていただけたのがありがたかったですし、選考委員の方が読むというのはそういうことなのか、と感激しました。

辻原:ミステリーの驚きとはまた違うんですが、彼が44歳だとわかった時、読むほうにもちょっとした衝撃がくるんです。その衝撃をきっかけに、読み直しというのは実際にページをめくって読むのではなくて、読んだ記憶の中で「イッツ・オンリー・トーク」の世界を辿り直すんです。

絲山:確かに他の本を読んでいて、映画やドラマのダイジェスト映像のような、走馬灯のようなものがブワーッと頭の中で流れる瞬間ってありますよね。「ああ、このためにあのシーンがあったのか!」と。
 あの小説はもちろん狙って書いたわけではなかったんですが、もしここで読者を驚かしてやれと思って書いていたら、うまくいかなかったと思います。

辻原:そこがミステリーと違うところで、ミステリーは仕組んでおいて驚かすんだけれど、絲山さんも含めて僕たちがやっているのは、自分でも意外なところに行きついてしまい、自分でも驚く、そういうことの繰り返しをやっている。その驚きと喜びのために。

絲山:そういう瞬間は書いていて頻繁に訪れるものですか?

辻原:頻繁にはないですが、そういう瞬間に出合うと、小説を書いてる面白さ、醍醐味を感じることはあります。

絲山:自分の力じゃないんだなぁ、と思います。

辻原:それは言葉、言語そのものが自分のものではないから。常に外からやってくるものなので、当然起きることなんですが、それをいかに精密化し、構造化するかというところが困難な作業。

絲山:ものすごく昔の文学作品と繋がっていたり、全く違うジャンルの人が残した発見と繋がっていったり、それに気づくと面白いなと思います。

辻原:書いていることと読んでいることは、ほとんど同じ作業で、書いているというよりも、読んでいる行為のほうが強いような気がします。

絲山:私も、書きながら読んでいるように思います。あと、聞いている感じもありますね。だからなのか、最近は自分の書いているものが不思議と、昔話のようなものに戻っていく感覚があります。

辻原: 絲山さんはこの数年、「文学界」で短編連作を書かれていましたが・・・あの連作はどういうタイトルになるんですか?

絲山:『神と黒蟹県』になると思います。

辻原:神話空間ですね。地名やタイトルからも、そういう空間を舞台にしていると示唆されている。

絲山:これまで群馬や富山、福岡など現実の場所を舞台にしてきたんですが、その場合は一生懸命取材をして、その地域で暮らす方が読んでも違和感を持たれないよう意識してきたんです。
 ただ、その書き方をすると、気を遣わなければいけないところも出てきてしまうんですよね。たとえば評判の悪い首長がいたとかこの町とこの町は仲が悪いといった、「わかっていても言ってはいけない本当のこと」が、架空の場所であれば書ける。
 現実に遠慮しないで書くことで、もう一歩先に進めるんじゃないかなと思ったんですが、もう一歩先に進んだと思ったら意外と見慣れた、昔話のような世界に戻ってきてしまったのかもしれません。

辻原:実際に存在する土地を描いたから、小説にリアリティが出る、というわけではないんです。具体的な誰もが知っている世界から離れているからこそ逆に、獲得できるリアリティがある。ガルシア=マルケスの『百年の孤独』で描かれているのは、まさにそういうリアリティですね。
 『百年の孤独』のマコンドと黒蟹県は、ちょっと似ているところがあるんじゃないかと思いました。ひょっとしたら、これから豚の尻尾を持った人間が出てくるかもしれない(笑)。


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